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化学物質規制の全体像|ラベル表示・SDS・リスクアセスメントの3つの義務

著者・監修: 依田尚人YDAIコンサルティング株式会社 代表

化学物質規制の全体像|ラベル表示・SDS・リスクアセスメントの3つの義務

化学物質規制への対応は、譲渡・提供時のラベル表示・SDS通知と、製造・取扱い時のリスクアセスメントを、対象物と行為ごとに分けて確認することから始めます。三つの制度は似た場面で登場しますが、義務を負う人、対象となる物、確認する時期は同じではありません。まず製品の流れと職場での取扱いを分けると、必要な確認を組み立てやすくなります。

根拠は労働安全衛生法第57条、第57条の2、第57条の3と関係省令です。これらの直近改正は令和7年法律第33号で、2025年5月14日公布、2026年4月1日施行です。本記事は2026年9月6日時点で施行中の条文を確認して整理しています。(出典:労働安全衛生法第57条・第57条の2・第57条の3/確認日: 2026-09-06)

化学物質規制の3つの義務とは

ラベル表示・SDS通知・リスクアセスメントの対象と行為の関係図
ラベル表示・SDS通知・リスクアセスメントの対象と行為の関係図

ラベル表示、SDS通知、リスクアセスメントは、化学物質の情報を伝え、職場での危険性又は有害性を調べるための制度です。三つを一つのチェック項目として扱わず、譲渡・提供と製造・取扱いのどちらに当たるかから確認します。(出典:労働安全衛生法第57条・第57条の2・第57条の3/確認日: 2026-09-06)

制度主な行為主な根拠
ラベル表示容器・包装で譲渡・提供する労働安全衛生法第57条
SDS通知譲渡・提供する労働安全衛生法第57条の2
リスクアセスメント製造・取り扱う労働安全衛生法第57条の3

ラベル表示の対象者と対象物

労働安全衛生法第57条第1項は、対象となる物を容器に入れ、又は包装して譲渡・提供する者に表示を求めています。対象物は労働安全衛生法施行令第18条と労働安全衛生規則第30条で定められ、名称、人体に及ぼす作用、貯蔵又は取扱い上の注意などを、容器又は包装に表示する枠組みです。(出典:労働安全衛生法第57条第1項、労働安全衛生法施行令第18条、労働安全衛生規則第30条・第32条・第33条/確認日: 2026-09-06)

主として一般消費者の生活の用に供するためのものには適用除外があります。また、運搬中と貯蔵中に固体以外の状態にならず、粉状にもならない物には、労働安全衛生規則第30条ただし書による表示の除外があります。製品名だけで結論を急がず、譲渡・提供の態様と物の状態を分けて見ます。(出典:労働安全衛生法第57条第1項ただし書、労働安全衛生規則第30条ただし書/確認日: 2026-09-06)

SDS通知の対象者と対象物

SDS通知は、労働安全衛生法第57条の2第1項により、通知対象物を譲渡・提供する者が行う制度です。成分及び含有量、物理的・化学的性質、人体に及ぼす作用、取扱い上の注意などの通知事項を、譲渡・提供する時までに相手方へ伝えます。(出典:労働安全衛生法第57条の2第1項、労働安全衛生規則第34条の2の3・第34条の2の4・第34条の2の5/確認日: 2026-09-06)

通知対象物は労働安全衛生法施行令第18条の2と労働安全衛生規則第34条の2で確認します。ラベル表示と異なり、固体の状態や粉状にならないことを理由とする同じ除外はありません。一般消費者の生活の用に供される製品についての適用除外と、ラベル固有の除外を混同しないことが必要です。(出典:労働安全衛生法第57条の2第1項ただし書、労働安全衛生法施行令第18条の2、労働安全衛生規則第34条の2/確認日: 2026-09-06)

リスクアセスメントはいつ必要か

製造・取扱い時に確認するリスクアセスメントの実施時期
製造・取扱い時に確認するリスクアセスメントの実施時期

リスクアセスメントは、通知対象物等を製造又は取り扱う事業者が、危険性又は有害性を調査する制度です。譲渡・提供時の情報伝達とは別に、実際の業務で何を確認するかという段階で考えます。(出典:労働安全衛生法第57条の3第1項、労働安全衛生規則第34条の2の7/確認日: 2026-09-06)

製造・取扱いで確認すること

対象物を原材料等として新規に採用又は変更するとき、対象物を扱う業務の作業方法又は手順を新規に採用又は変更するとき、危険性又は有害性に変化が生じ、又は生ずるおそれがあるときが、実施時期の起点です。法令上、単に一定期間が経過したことだけを定期実施の起点とはしていません。(出典:労働安全衛生規則第34条の2の7第1項/確認日: 2026-09-06)

調査では、危険又は健康障害を生ずるおそれの程度、有害性とばく露される程度などを考慮する方法が定められています。結果と講ずる措置の内容は記録し、次に調査を行うまで保存します。業務に従事する労働者への周知も、掲示、書面交付、電子機器での常時確認などの方法で行います。(出典:労働安全衛生規則第34条の2の7第2項、第34条の2の8/確認日: 2026-09-06)

譲渡・提供と管理の役割

譲渡・提供では、まずラベル表示又はSDS通知の要否を確認します。受け取った側が製造又は取り扱う場合には、情報を職場で周知し、リスクアセスメントの対象と実施時期を別に確認します。この流れを分けることで、SDSを受け取ったことだけで職場の確認が完了したと誤解しにくくなります。(出典:労働安全衛生法第57条の2第1項・第57条の3第1項・第101条第4項/確認日: 2026-09-06)

化学物質管理者は、リスクアセスメント対象物を製造・取り扱う事業場又は譲渡・提供する事業場ごとに選任する制度です。全事業場に一律に当てはめるのではなく、対象物と事業場の役割を確認します。保護具着用管理責任者にも、リスクアセスメントの結果に基づき保護具を使用させる場合という条件があります。(出典:労働安全衛生規則第12条の5・第12条の6/確認日: 2026-09-06)

対応を始める順番

製品情報から職場での周知までの確認順を示すフロー
製品情報から職場での周知までの確認順を示すフロー

対応は、物質名だけを検索して終えるのではなく、製品、成分情報、取引、職場での取扱いを順に整理します。一般的な確認順を社内の記録に残すと、情報の更新時に見直す場所を把握しやすくなります。

取扱物質とSDSを整理する

最初に、製品名、成分情報、入手済みのSDS、譲渡・提供するのか、製造・取り扱うのかを並べます。そのうえで、労働安全衛生法施行令第18条・第18条の2と労働安全衛生規則の別表を確認します。CAS番号は法令上の該当・非該当を決める名称ではないため、物質名と参考情報を同じ欄に混ぜないようにします。(出典:労働安全衛生法施行令第18条・第18条の2、労働安全衛生規則第30条・第34条の2/確認日: 2026-09-06)

SDSでは、通知事項の更新が必要かも確認します。通知対象物の「人体に及ぼす作用」は、直近の確認日から起算して5年以内ごとに、最新の科学的知見に基づき変更の要否を確認し、変更が必要なら確認から1年以内に変更する仕組みです。(出典:労働安全衛生規則第34条の2の5第2項/確認日: 2026-09-06)

担当者、周知、記録を確認する

対象物を扱う職場では、リスクアセスメントの結果と講ずる措置を記録し、必要な方法で労働者へ周知します。化学物質管理者を選任する場面では、ラベル表示、SDS通知、リスクアセスメント、記録・周知などの管理事項を、事業場の役割に応じて確認します。(出典:労働安全衛生規則第12条の5第1項、労働安全衛生規則第34条の2の8、労働安全衛生法第101条第4項/確認日: 2026-09-06)

記録には、何を根拠に、いつ確認したかを残します。製品や作業方法が変われば、以前の確認をそのまま使えるとは限りません。確認日と資料の版を対応付けておくと、変更時に改めて対象物、SDS、作業の順で確認できます。

法令上の注意点

ラベル表示とSDS通知の対象範囲および行政対応の整理図
ラベル表示とSDS通知の対象範囲および行政対応の整理図

制度の名称が似ていても、適用除外や罰則の対象は同じではありません。条文ごとの対象を分けて把握することが、過不足のない情報管理につながります。

ラベルとSDSの対象範囲を同一視しない

ラベル表示には、運搬中及び貯蔵中に固体以外の状態にならず、かつ粉状にならない物についての除外があります。ただし、この除外には一定の危険物、火災原因となるおそれがある物、皮膚腐食の危険を生ずる物などが含まれない場合があります。SDS通知には、同じ固体・粉状に関する除外はありません。(出典:労働安全衛生規則第30条ただし書、第34条の2/確認日: 2026-09-06)

そのため、ラベル表示の除外に当たる可能性だけを見て、SDS通知も不要と扱うことはできません。譲渡・提供する物の状態と対象範囲を、ラベル用とSDS用に分けて確かめます。製品ごとの該当判断は、所轄労働基準監督署又は専門家へ確認することが必要です。

行政対応と罰則の扱い

労働安全衛生法第57条第1項の表示をしない場合又は同条第2項の文書を交付しない場合は、同法第119条第3号により6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金の対象です。一方、同法第57条の2第1項のSDS通知義務と第57条の3第1項のリスクアセスメントは、同法第119条・第120条の列挙に含まれていません。(出典:労働安全衛生法第57条、第57条の2、第57条の3、第119条、第120条/確認日: 2026-09-06)

このうちSDS通知義務の扱いは、2030年3月31日までのものです。労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)により、2030年4月1日からは、同法第57条の2第1項の規定による通知をせず、又は虚偽の通知をしたときが同法第119条第4号に加わり、6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金の対象になります。同法第57条の2第2項の変更時の通知も同日から義務になりますが、こちらは第119条・第120条の列挙に入りません。(出典:労働安全衛生法第57条の2、第119条/令和7年法律第33号附則第1条第7号、令和8年政令第195号/確認日: 2026-09-12)

実際には、労働基準監督官の臨検監督等で法令違反が確認された場合に、是正勧告又は指導が行われ、是正されない場合などに司法処分である送検へ進む段階があります。条文上の法定刑と監督上の対応を分け、義務ごとに根拠を確認します。(出典:労働安全衛生法第119条・第120条/確認日: 2026-09-06)

よくある質問

ラベル表示・SDS通知・リスクアセスメントの確認ポイントをまとめた図
ラベル表示・SDS通知・リスクアセスメントの確認ポイントをまとめた図

ラベル表示とSDS通知は同じ対象ですか

いずれも譲渡・提供に関わる制度ですが、ラベル表示には運搬・貯蔵中に固体以外にならず粉状にもならない物の除外があります。SDS通知には同じ除外がありません。(出典:労働安全衛生規則第30条ただし書、第34条の2/確認日: 2026-09-06)

SDSを通知しないと直ちに罰金になりますか

労働安全衛生法第57条の2第1項の通知義務は、同法第119条・第120条の罰則列挙に含まれていません。法定刑の対象と、臨検監督等で確認される監督上の対応は分けて確認します。ただし、この扱いは2030年3月31日までで、2030年4月1日からは、同項の規定による通知をせず、又は虚偽の通知をしたときが同法第119条第4号に加わり、6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金の対象になります。同条第2項の変更時の通知も同日から義務になりますが、罰則の列挙には入りません。(出典:労働安全衛生法第57条の2、第119条、第120条/令和7年法律第33号附則第1条第7号、令和8年政令第195号/確認日: 2026-09-12)

最初に確認する資料は何ですか

製品名、成分情報、既存のSDS、譲渡・提供又は製造・取扱いの実態を整理し、公開リストと照合する順に進めます。個別の該当判断は、所轄労働基準監督署又は専門家へ確認します。(出典:労働安全衛生法施行令第18条・第18条の2、労働安全衛生規則第30条・第34条の2/確認日: 2026-09-06)

まとめ

化学物質規制の確認では、ラベル表示、SDS通知、リスクアセスメントを同じ義務として扱わないことが出発点です。譲渡・提供の有無、容器・包装の状態、製造・取扱いの実態を整理し、根拠条文と確認日を記録します。法令・制度の全体を確認するときは、法令・制度の記事一覧を利用できます。

掲載内容の訂正やご意見は、お問い合わせの該当種別から連絡できます。製品ごとの該当判断や個別の法令解釈は、所轄労働基準監督署又は専門家へ確認してください。

出典

著者・監修

依田尚人YDAIコンサルティング株式会社 代表

依田尚人は YDAIコンサルティング株式会社 代表。労働安全衛生法のSDS・ラベル表示・リスクアセスメント義務と対象物質の改正動向について、e-Gov・厚生労働省等の公開情報を一次ソースまで確認する工程を標準として、本サイトの記事を設計・監修しています。

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