化学物質管理者の選任義務|対象事業場・14日以内の手順・役割
著者・監修 ・ YDAIコンサルティング株式会社 代表
目次
化学物質管理者は、リスクアセスメント対象物を製造・取り扱う事業場ごと、又はそれ以外で譲渡・提供する事業場ごとに選任する必要があり、規模による下限は定められていません。選任が必要かを確かめる際は、従業員数だけでなく、事業場で行う製造・取扱い・譲渡・提供の実態を分けて確認します。
労働安全衛生規則第12条の5は令和4年厚生労働省令第91号により新設され、2024年4月1日に施行されました。本記事は、同条の対象、選任期限、管理事項、周知の方法を一般的に整理するものであり、個別の事業場における選任要否を確定するものではありません(出典:労働安全衛生規則第12条の5/確認日: 2026-09-06)。
化学物質管理者が必要になる事業場

化学物質管理者の選任は、事業場単位で考える制度です。リスクアセスメント対象物を扱うか、又は譲渡・提供のみを行うかによって、管理する事項の範囲が異なります。
製造又は取扱いを行う事業場
リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う事業場では、事業場ごとに化学物質管理者を選任します。リスクアセスメント対象物は、労働安全衛生規則第12条の5第1項で定める範囲であり、主として一般消費者の生活の用に供される製品に係るものは除かれます(出典:労働安全衛生規則第12条の5第1項/確認日: 2026-09-06)。
選任の起点は、事業場に対象物を製造又は取り扱う実態があることです。部署名や事業場の規模だけで一律に結論を出さず、扱う物と業務の内容を記録した上で確認します。
譲渡又は提供のみを行う事業場
製造又は取扱いを行わず、リスクアセスメント対象物の譲渡又は提供のみを行う事業場にも、化学物質管理者の選任に関する規定があります。この場合は、第1項の事業場を除いた事業場ごとに選任し、表示等と労働者への教育の管理を担わせます(出典:労働安全衛生規則第12条の5第2項/確認日: 2026-09-06)。
表示等や教育の管理を他の事業場で行っている場合には、その事業場で選任した化学物質管理者に管理させる仕組みがあります。販売や流通を担う事業場であっても、扱う行為を区分して確認することが必要です(出典:労働安全衛生規則第12条の5第1項ただし書・第2項ただし書/確認日: 2026-09-06)。
選任の期限と要件

選任では、いつまでに選ぶかと、どのような能力を確認するかを分けて管理します。講習の時間数や個別の受講方法は、ここでは断定せず、法令が定める能力の枠組みに留めます。
選任事由が発生してから14日以内
化学物質管理者は、選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任します。事由が発生した日、選任日、氏名を周知した日を分けて残すと、期限と実施状況を追いやすくなります(出典:労働安全衛生規則第12条の5第3項第1号/確認日: 2026-09-06)。
この期限は、対象物の追加や取扱い開始などにより選任が必要になった場面と結び付けて確認します。改正年だけを予定表に置くのではなく、事業場の業務が変わった時点でも確認する運用が必要です。
講習と必要な能力を確認する範囲
リスクアセスメント対象物を製造する事業場では、厚生労働大臣が定める化学物質の管理に関する講習を修了した者、又は同等以上の能力を有すると認められる者から選任します。それ以外の事業場では、これに加え、管理事項を担当するために必要な能力を有すると認められる者が対象です(出典:労働安全衛生規則第12条の5第3項第2号、令和4年厚生労働省告示第276号/確認日: 2026-09-06)。
講習の科目や時間数は、事業場の区分や最新の案内を確認して扱います。本記事では講習内容を具体的な受講要件として断定せず、厚生労働省の案内と所轄窓口で確認する前提で整理します。
化学物質管理者の管理事項

化学物質管理者には、選任だけでなく、ラベル、SDS、リスクアセスメント、記録、周知、教育に関する管理事項があります。事業場の区分ごとに、どこまでを管理対象にするかを担当表へ落とし込みます。
ラベル、SDS、リスクアセスメント
製造又は取扱いを行う事業場の化学物質管理者は、ラベル表示、文書交付、SDS通知、リスクアセスメントの実施に関する事項を管理します。リスクアセスメントの結果に基づく措置の内容と実施、対象物を原因とする労働災害が起きた場合の対応も管理事項に含まれます(出典:労働安全衛生規則第12条の5第1項各号/確認日: 2026-09-06)。
対象物の範囲は化学物質規制の基本で確認でき、改正の時系列は化学物質規制の改正スケジュールで整理しています。管理事項を確認する際は、対象物の確認と改正時期の確認を別の欄で扱うと、更新箇所を追いやすくなります。
記録、周知、労働者教育
リスクアセスメントの結果に関する記録の作成・保存・周知、ばく露低減措置に関する記録の作成・保存・周知、管理を実施するための労働者教育は、製造又は取扱いを行う事業場における管理事項です。譲渡又は提供のみを行う事業場では、表示等と教育の管理が対象になります(出典:労働安全衛生規則第12条の5第1項各号・第2項/確認日: 2026-09-06)。
記録を一つの担当者だけが保管するのではなく、更新日と保管場所を決めておくと引継ぎの際に確認しやすくなります。SDSの通知を受けた側での作業場周知など、別の規定による実施事項も担当表に区別して置きます。
選任後に行うこと

選任後は、本人の氏名を記録するだけでは足りません。管理事項を実施できる権限を与え、関係する労働者が担当者を確認できる状態にします。
権限の付与
事業者は、化学物質管理者にその職務を行うために必要な権限を与えます。担当表には、管理事項、確認を依頼する部署、記録を残す場所を整理し、権限と実際の業務が離れないようにします(出典:労働安全衛生規則第12条の5第4項/確認日: 2026-09-06)。
権限の付与は、事業場が必要な管理を継続するための前提です。担当者の交代時には、選任日だけでなく、引き継いだ管理事項と確認日も更新します。
氏名を周知する方法
化学物質管理者の氏名は、事業場の見やすい箇所への掲示などにより、関係労働者へ周知します。周知方法は、誰がどの管理事項を担当するかを現場で確認できる状態につなげるものです(出典:労働安全衛生規則第12条の5第5項/確認日: 2026-09-06)。
同条は労働安全衛生法第119条・第120条の罰則列挙には含まれていません。労働基準監督官の臨検監督等で法令違反が確認された場合は是正勧告・指導が行われ、是正されない場合等に司法処分へ進むという段階を踏みます(出典:労働安全衛生法第119条・第120条、労働安全衛生規則第12条の5/確認日: 2026-09-06)。
まとめ
化学物質管理者は、対象物を扱う事業場又は譲渡・提供のみを行う事業場ごとに確認する制度です。対象、14日以内の選任、管理事項、権限、氏名の周知を一続きの管理表に残すと、担当変更後も確認の流れを保ちやすくなります。
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よくある質問
- Q. 従業員数が少ない事業場でも選任が必要ですか。
- 労働安全衛生規則第12条の5には、労働者数の下限は定められていません。対象物を製造・取り扱いするか、又は譲渡・提供するかを、事業場ごとに確認します(出典:労働安全衛生規則第12条の5第1項・第2項/確認日: 2026-09-06)。
- Q. 選任はいつまでに行いますか。
- 選任すべき事由が発生した日から14日以内です。取扱いの開始や事業場の業務変更など、選任の起点になり得る事実と選任日を区別して記録します(出典:労働安全衛生規則第12条の5第3項第1号/確認日: 2026-09-06)。
- Q. 講習の時間数は記事で確認できますか。
- 本記事では、講習の科目・時間数を断定しません。必要な講習又は能力の確認は、厚生労働省の案内と所轄労働基準監督署などの窓口で最新情報を確認します。
出典
- 1.労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)/e-Gov法令検索(laws.e-gov.go.jp)
- 2.労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)/e-Gov法令検索(laws.e-gov.go.jp)
- 3.厚生労働省「化学物質による労働災害防止のための新たな規制について」(mhlw.go.jp)