法令・制度解説

SDSの5年以内ごとの確認は義務か|対象物と努力義務の違い

依
依田尚人

著者・監修 ・ YDAIコンサルティング株式会社 代表

8分
目次

SDSの「人体に及ぼす作用」は、通知対象物では5年以内ごとに変更の要否を確認する義務であり、通知対象外の特定危険有害化学物質等では努力義務です。同じ「五年ごと」という表現でも、対象となる物質と条文によって義務の強さ、変更後の対応が異なります。まず自社のSDSを、通知対象物と対象外の領域に分けて管理します。

本記事では、労働安全衛生規則第34条の2の5と第24条の15を対照し、確認日から変更時の記録までを整理します。個別の物質や製品がどちらに当たるかを本記事で確定するものではありません。

SDSの5年以内ごとの確認とは

SDSの五年以内ごとの確認を区分する図
SDSの五年以内ごとの確認を区分する図

確認の対象は、SDSに記載される全ての情報を同じ周期で書き換えることではありません。「人体に及ぼす作用」について、対象区分ごとに変更の要否を確認する規定です。

本記事の根拠は、労働安全衛生規則第34条の2の5第2項及び第24条の15第2項です。本記事で扱う内容は、2026-09-06時点で施行中の現行条文です。(出典:労働安全衛生規則第34条の2の5第2項、第24条の15第2項/確認日: 2026-09-06)

区分確認する事項変更が必要なとき
通知対象物人体に及ぼす作用の変更要否確認から一年以内に変更
通知対象外の特定危険有害化学物質等人体に及ぼす作用の変更要否同様の確認・変更に努める

通知対象物で確認する事項

通知対象物を譲渡又は提供する者は、「人体に及ぼす作用」について、直近の確認日から五年以内ごとに一回、最新の科学的知見に基づいて変更の要否を確認します。この確認は、前回のSDS発行日だけを見て終えるものではなく、直近に確認した日を起点にします。

変更が必要と確認したときは、その確認から一年以内に通知事項を変更します。対象物の範囲、確認日、確認結果、変更の有無を対応付けておくと、次の確認時期を製品ごとに追えます。(出典:労働安全衛生規則第34条の2の5第2項/確認日: 2026-09-06)

対象外物質で求められる努力義務

通知対象物ではない特定危険有害化学物質等を譲渡又は提供する者にも、SDSと同じ十二項目を通知するよう努める規定があります。「人体に及ぼす作用」は、五年以内ごとに変更の要否を確認し、必要なら確認から一年以内に変更するよう努めます。

この領域は法的な義務と同じ言葉で扱わず、努力義務として一覧上で区別します。対象外だから更新確認が不要という意味ではないため、確認日と変更理由を残す運用を用意します。(出典:労働安全衛生規則第24条の15第1項から第3項/確認日: 2026-09-06)

確認後に変更が必要な場合

変更が必要なSDSを更新して通知する流れ
変更が必要なSDSを更新して通知する流れ

変更要否の確認と、変更後の通知は別の作業です。確認結果を残したうえで、期限、変更箇所、相手方への伝達方法を順に管理します。

通知対象物の変更期限

通知対象物では、変更が必要と確認した日から一年以内に、該当する通知事項を変更します。確認日と変更完了日を別の欄にしないと、五年以内ごとの確認を済ませたことと、SDSを変更済みであることを混同しやすくなります。

一覧には、対象製品、直近の確認日、変更の要否、変更期限、変更後の通知日を並べます。複数の製品で同じ情報を用いる場合も、どの製品のどのSDSに反映したかを追える状態にします。(出典:労働安全衛生規則第34条の2の5第2項/確認日: 2026-09-06)

相手方へ通知又は閲覧可能にする方法

通知対象物の通知事項を変更したときは、変更後の事項を適切な時期に相手方へ通知し、又は閲覧できるようにします。文書交付だけでなく、電子メールや、ホームページのアドレスを伝えて閲覧を求める通知方法も規定されています。

URLを使う場合は、送付記録だけでなく、変更後の情報が閲覧できる先を管理します。相手方への通知と、自社の作業場で労働者に周知することは役割が異なるため、記録も分けて確認します。(出典:労働安全衛生規則第34条の2の3、第34条の2の5第3項、労働安全衛生法第101条第4項/確認日: 2026-09-06)

管理台帳に残す情報

SDSの確認記録に残す項目を示す図
SDSの確認記録に残す項目を示す図

確認作業を継続するには、SDSファイルと確認の記録を結び付ける必要があります。台帳の形式は紙でも電子的なものでもよいですが、確認の根拠が次の担当者に伝わる項目をそろえます。

直近の確認日

直近の確認日は、五年以内ごとの確認の起点です。SDSを受け取った日、発行日、内容を確認した日を同じ欄に混在させず、変更の要否を確認した日を明示します。

製品名、供給元、SDSの版又は保管先、対象区分と一緒に記録すると、確認対象の取り違えを減らせます。担当者が変わる場合は、未確認の対象と次に確認する時期が分かるように引き継ぎます。

変更の要否と根拠

確認結果には、変更が必要かどうかと、その判断の根拠となった科学的知見又は受領情報を対応付けます。変更が不要とした記録も残すことで、次回の確認時に前回の確認範囲をたどれます。

通知対象物と努力義務の対象を同じ表で扱う場合は、対象区分の列を設けます。これにより、法的な義務としての期限と、同様の確認・変更に努める領域を混同せずに管理できます。(出典:労働安全衛生規則第34条の2の5第2項、第24条の15第2項・第3項/確認日: 2026-09-06)

誤解しやすい点

SDS更新で混同しやすい点を整理する図
SDS更新で混同しやすい点を整理する図

五年以内ごとの確認は、対象物の区分と確認事項を切り分けることが重要です。更新日だけをそろえる運用では、確認義務と努力義務、変更後の通知を取り違えるおそれがあります。

すべてのSDSを同じ周期で扱わない

通知対象物では「人体に及ぼす作用」の変更要否を五年以内ごとに確認する義務がありますが、全てのSDSの全ての記載事項を同じ周期で更新するという規定ではありません。対象外の特定危険有害化学物質等には、同様の確認・変更を行うよう努める規定があります。

また、SDSの通知義務である労働安全衛生法第57条の2第1項は、同法第119条・第120条の罰則列挙に含まれていません。法令違反が臨検監督等で確認された場合には是正勧告・指導が行われ、是正されない場合等に司法処分へ進む流れと、条文上の法定刑は分けて確認します。(出典:労働安全衛生法第57条の2第1項、第119条、第120条/確認日: 2026-09-06)

この罰則の扱いは2030年3月31日までのものです。2030年4月1日からは、同法第57条の2第1項の規定による通知をせず、又は虚偽の通知をしたときが同法第119条第4号に加わり、6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金の対象になります(令和7年法律第33号。施行期日は令和8年政令第195号が定めています)。同条第2項の変更時の通知も同日から義務になりますが、罰則の列挙には入りません。(出典:労働安全衛生法第57条の2、第119条/令和7年法律第33号附則第1条第7号、令和8年政令第195号/確認日: 2026-09-12)

個別の対象確認を外部へ相談する場面

製品や成分が通知対象物又は特定危険有害化学物質等に当たるか、どのSDSを変更すべきかは、個別の情報により異なります。個別の対象確認は、所轄労働基準監督署・専門家へ確認します。

社内では、製品名、成分情報、用途、既存SDS、譲渡又は提供の実態、直近の確認記録を整理してから確認先へ伝えます。本記事は一般的な確認の流れを示すもので、個別の法令解釈や該当判定を行うものではありません。

まとめ

SDSの五年以内ごとの確認は、通知対象物では義務、通知対象外の特定危険有害化学物質等では努力義務です。直近の確認日、変更の要否、変更期限、相手方への通知を分けて記録すると、更新作業を追いやすくなります。SDSの基本的な対象は化学物質規制の全体像とSDS交付義務の対象物質数で確認できます。法令・制度の記事も確認の起点になります。

制度の変更時期は化学物質規制の改正スケジュール、日常の更新手順はSDS管理の更新フロー、管理方法の選択はSDS管理の方法を確認してください。掲載内容の訂正、ご意見・ご質問はお問い合わせフォームの該当種別からお寄せください。

よくある質問

Q. 通知対象物では何を5年以内ごとに確認しますか。
「人体に及ぼす作用」について、直近の確認日から5年以内ごとに最新の科学的知見に基づき変更の要否を確認します。確認対象は通知対象物であり、確認日を記録して次回の起点にします。(出典:労働安全衛生規則第34条の2の5第2項/確認日: 2026-09-06)
Q. 変更が必要ならいつまでに変えますか。
通知対象物では、変更が必要と確認したときから1年以内に変更します。変更後は、変更した通知事項を適切な時期に相手方へ通知し、又は閲覧できるようにします。(出典:労働安全衛生規則第34条の2の5第2項・第3項/確認日: 2026-09-06)
Q. 対象外の物質は何もしなくてよいですか。
いいえ。特定危険有害化学物質等については、同様の確認と変更を行うよう努めることが定められています。対象外であることだけを理由に記録や確認を省かないよう、対象区分を分けて管理します。(出典:労働安全衛生規則第24条の15第2項・第3項/確認日: 2026-09-06)

出典

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