化学物質リスクアセスメントの実施時期|3つの起点と記録・周知
著者・監修 ・ YDAIコンサルティング株式会社 代表
目次
化学物質リスクアセスメントは、対象物を新規に採用又は変更するとき、作業方法又は手順を新規に採用又は変更するとき、危険性・有害性等に変化が生じるおそれがあるときに実施します。年ごとに一律で行うというより、物質又は作業の変化を起点に、記録と周知までを一連で進める制度です。導入、変更、情報更新の場面で実施時期を確認します。
対象は、リスクアセスメント対象物を製造又は取り扱う事業者です。本記事では、労働安全衛生規則の実施時期、記録、保存、周知に限定して一般的な流れを説明し、個別の作業や物質の該当判定は行いません。
リスクアセスメントを実施する3つの起点

法令上の実施時期は、原材料等、作業方法又は手順、危険性・有害性等の変化という三類型です。根拠は労働安全衛生法第57条の3第1項及び労働安全衛生規則第34条の2の7第1項で、2026-09-06時点で施行中の現行条文を確認しています。(出典:労働安全衛生法第57条の3第1項、労働安全衛生規則第34条の2の7第1項/確認日: 2026-09-06)
| 実施の起点 | 確認する変化 |
|---|---|
| 原材料等 | 対象物を新規に採用するとき、又は変更するとき |
| 作業 | 製造・取扱い業務の方法又は手順を新規に採用するとき、又は変更するとき |
| 情報 | 危険性・有害性等に変化が生じた、又は生ずるおそれがあるとき |
原材料等を新規に採用又は変更するとき
対象物を原材料等として新規に採用するとき、又は変更するときは、リスクアセスメントの実施時期です。ここでいう変更には、これまで扱っていなかった対象物の採用だけでなく、使用する原材料を切り替える場面も含まれます。
着手前には、製品名、成分情報、用途、既存のSDS、取扱う業務を対応付けます。情報がそろっていない段階では、採用の事実と確認が必要な資料を記録し、個別の該当は所轄労働基準監督署・専門家へ確認します。(出典:労働安全衛生規則第34条の2の7第1項第1号/確認日: 2026-09-06)
作業方法又は手順を新規に採用又は変更するとき
対象物を製造又は取り扱う業務で、作業の方法又は手順を新規に採用するとき、又は変更するときも実施の起点です。物質そのものが同じでも、取扱いの仕方が変わる場合は、作業に即して確認します。
変更の記録には、変更前後の作業、対象物、実施日、関係する作業場を残します。作業手順書の改訂だけを記録するのではなく、リスクアセスメントの結果と講ずる措置へつながるように整理します。(出典:労働安全衛生規則第34条の2の7第1項第2号、第34条の2の8第1項/確認日: 2026-09-06)
危険性又は有害性の変化を確認する

物質の採用や作業変更だけではなく、危険性・有害性等に変化が生じた、又は生ずるおそれがある場合も起点になります。SDSの更新や新しい情報を受け取ったときは、内容と自社の作業を結び付けて確認します。
変化が生じた又は生ずるおそれがあるとき
危険性又は有害性等について変化が生じた、又は生ずるおそれがあるときは、労働安全衛生規則第34条の2の7第1項第3号に基づく実施時期です。情報の変化が作業に関係するかを確認するため、受領したSDS、変更された通知事項、対象となる業務を同じ記録でたどれるようにします。
実施方法は、危険又は健康障害を生ずるおそれの程度を考慮する方法、ばく露される程度と有害性の程度を考慮する方法、又はこれらに準ずる方法のいずれか若しくは併用です。危険性に係るものは、同条第2項第1号又は第3号の方法に限られます。(出典:労働安全衛生規則第34条の2の7第1項第3号・第2項/確認日: 2026-09-06)
定期実施を一律の義務としない理由
同条第1項は、実施時期を三つの変化の類型で定めており、一律の定期実施を義務として定めていません。社内で定期点検を設けることと、法令上の実施起点は区別して、変化があった場面を記録します。
また、労働安全衛生法第57条の3第1項は、同法第119条・第120条の罰則列挙に含まれていません。臨検監督等で法令違反が確認された場合には是正勧告・指導が行われ、是正されない場合等に司法処分へ進む流れと、条文上の法定刑は分けて確認します。(出典:労働安全衛生法第57条の3第1項、第119条、第120条/確認日: 2026-09-06)
記録と保存の方法

実施したことを後から確認できるようにするため、結果だけでなく対象物、業務、措置を記録します。記録は、次の実施時期を判断するための基礎にもなります。
記録する4つの事項
記録する事項は、対象物の名称、業務の内容、リスクアセスメントの結果、講ずる措置の内容です。四つの事項を同じ記録に残すことで、どの業務について何を検討し、その結果どの措置を予定又は実施したかをたどれます。
対象物が複数ある場合は、名称と業務の対応を明確にします。個別の濃度基準値や物質別の取扱いを一般化せず、変更があったときに記録を見直す運用にします。(出典:労働安全衛生規則第34条の2の8第1項/確認日: 2026-09-06)
次回実施までの保存期間
記録は、次にリスクアセスメントを行うまでの期間、保存します。ただし、三年以内に再実施したときは三年間保存する規定です。保存期間を固定の年数だけで管理すると、次回実施との関係を見落とすことがあります。
記録の保管先には、実施日、次に実施した日、保存の扱いを対応付けます。紙と電子的な記録を併用する場合も、どちらが正本か、誰が保存状況を確認するかを定めます。(出典:労働安全衛生規則第34条の2の8第2項/確認日: 2026-09-06)
労働者への周知

リスクアセスメントの記録は保管だけで終わりません。当該業務に従事する労働者が、作業場で必要な内容を確認できるように周知します。
掲示、書面、電子機器による周知
周知は、作業場への常時掲示、書面の交付、又は電子機器で常時確認できる方法で行います。どの方法を使うかにかかわらず、対象となる業務に従事する労働者が必要なときに確認できる状態を維持します。
電子機器を用いる場合は、閲覧場所、対象者、更新後の情報が見られるかを点検します。周知方法と記録の保管場所を対応付けると、担当者が変わった後も確認しやすくなります。(出典:労働安全衛生規則第34条の2の8第1項/確認日: 2026-09-06)
化学物質管理者との役割分担
リスクアセスメント対象物を製造又は取り扱う事業場では、化学物質管理者の管理事項に、リスクアセスメントの実施と、その結果の記録・保存・周知が含まれます。対象物の譲渡又は提供のみを行う事業場には、表示等及び教育管理に関する管理事項が定められています。
化学物質管理者は全ての事業場に一律で求められるものではなく、対象となる事業場ごとに考えます。実務では、管理者、作業現場の担当者、記録を保管する担当者の役割を分け、変更時の連絡経路を残します。(出典:労働安全衛生規則第12条の5第1項・第2項/確認日: 2026-09-06)
まとめ
化学物質リスクアセスメントの実施時期は、原材料等、作業方法又は手順、危険性・有害性等の変化という三つの起点で確認します。実施後は、四つの記録事項、保存、労働者への周知を一緒に管理することが重要です。化学物質規制の全体像と2026年4月のSDS・ラベル表示義務も、対象や改正の整理に役立ちます。法令・制度の記事も確認の起点になります。
制度の変更予定は化学物質規制の改正スケジュール、選任の考え方は化学物質管理者の選任要件、管理方法はSDS管理の方法で確認できます。掲載内容の訂正、ご意見・ご質問はお問い合わせフォームの該当種別からお寄せください。
よくある質問
- Q. リスクアセスメントは毎年必ず行いますか。
- 法令上の実施時期は、対象物又は作業方法の新規採用・変更、危険性又は有害性等の変化のおそれという3類型です。一律の定期実施とは定められていません。(出典:労働安全衛生規則第34条の2の7第1項/確認日: 2026-09-06)
- Q. 何を記録しますか。
- 対象物の名称、業務の内容、リスクアセスメントの結果、講ずる措置の内容を記録します。記録する四つの事項を対応付けて、変更時に見直せる状態にします。(出典:労働安全衛生規則第34条の2の8第1項/確認日: 2026-09-06)
- Q. 記録はいつまで保存しますか。
- 次にリスクアセスメントを行うまで保存します。3年以内に再実施したときは3年間保存します。(出典:労働安全衛生規則第34条の2の8第2項/確認日: 2026-09-06)
出典
- 1.労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)/e-Gov法令検索(laws.e-gov.go.jp)
- 2.労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)/e-Gov法令検索(laws.e-gov.go.jp)